軽度の知的障害と生活の困難 〜見えにくい生きづらさに寄り添う〜

 

一見すると「普通に見える」——それが、軽度の知的障害を持つ方々が社会で直面している最大のハードルかもしれません。

軽度知的障害とは、IQが50〜70程度の範囲に該当し、学習面や社会生活での困難があるものの、日常会話や基本的な生活動作が可能な状態を指します。しかし、その“できる部分”が先に見えることで、周囲からの理解や支援が届きにくくなる現実があります。

今回は、軽度の知的障害を持つ方が日常生活の中でどのような「生活苦」に直面しているのかを見つめ、その支援のあり方を考えてみます。


■ 経済的な不安定さ

まず直面するのが、安定した収入を得にくいという問題です。知的障害があることで、職業の選択肢が限られ、非正規雇用や単純作業中心の仕事に就くことが多くなります。結果として賃金が低く、生活が常にギリギリという状況に。

さらに、お金の使い方や計画がうまくできず、無意識のうちに支出が増えたり、詐欺に巻き込まれてしまうケースもあります。生活保護や各種福祉制度を利用すべき状況であっても、制度の内容を理解しきれず申請を諦めてしまうことも少なくありません。


■ 社会的な孤立と誤解

軽度の知的障害は、外見や話し方からはわかりづらいため、「なぜこんなこともできないの?」という誤解を受けやすい障害です。周囲の無理解や偏見、そして本人の対人スキルの未熟さが相まって、人間関係がうまく築けず、孤立してしまうケースが多く見られます。

また、地域社会や学校、職場といった集団の中で自分の居場所を見つけられず、精神的な負担を抱えてしまうことも。


■ 日常生活の中のつまずき

毎日の生活の中にも、数多くの「壁」があります。
例えば、バスや電車の乗り換え、買い物時の値段の比較、携帯電話やクレジットカードなどの契約内容の理解など、他の人にとっては“当たり前”のことが困難です。

また、時間の感覚が曖昧なために約束の時間を守れなかったり、家事の手順を覚えられなかったりすることもあります。


■ 支援につながりにくい現実

もっとも深刻なのは、「支援を受けるべき人なのに、支援に届かない」状態です。
自分の困っていることを言葉にするのが難しく、困っていること自体を“困りごと”として認識できていない場合もあります。そのため、医療機関や福祉サービスとつながる機会を逃し、問題が悪化してしまうこともあります。


■ 支援の鍵は「理解」と「つながり」

こうした状況に対して、私たちにできることは何でしょうか。

まずは、軽度の知的障害のある方が「見えにくい困難」を抱えていることを理解すること。
そして、必要に応じて相談支援専門員やソーシャルワーカーが関わり、個々の生活状況に合った支援を提供することが重要です。

就労継続支援や生活訓練の場、地域の居場所づくり、学校や職場での支援体制の整備など、本人が「自分らしく生きられる場所」を増やしていくことが、生活の安定と心の安心につながります。


■ 最後に

軽度の知的障害を持つ方の“生きづらさ”は、本人の努力不足ではなく、社会側の「気づきの不足」から来ることが多いのです。

支援とは、「何かをしてあげる」ことではなく、「そばにいて、つながり続ける」こと。
誰もが安心して暮らせる社会をつくるために、まずは“見えにくい困難”に目を向けることから始めてみませんか?

 

 

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